ぴこはな理事座談会#2「便利なのに苦しい」今の子育て現場で起きていること

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子育て支援サービスは増え、無料の情報もあふれる時代。それでも、子育ての苦しさや孤独感は、むしろ強まっています。理事たちが現場で感じているリアルな「今の子育て家庭が抱える課題」について語りました。

前回の理事座談会#1の記事はこちら▼

目次

AIが相談相手になる時代

NPO法人ぴこはな代表のいずみさんは、今の子育て環境について、少し前では考えられなかった変化が起きていると話します。

いずみ「私の長男は、現在8歳。たった8年でも、子育ての環境が全然違うと感じることがすごくたくさんあって。例えば、困ったお母さんが、赤ちゃんの泣き声をAIに聞かせて『何で泣いてるのか教えてって』って相談する時代に、既になっています。」

実際に、赤ちゃんの泣き声を分析し、理由を推測するAIサービスも登場しています。昔に比べると、子育てに関する情報は圧倒的に増えました。

スマートフォンを開けば、専門家のアドバイスも、育児の知識も、いつでも手に入ります。けれど、その一方で見過ごせない重大な課題があります。

いずみ「情報はたくさんあるけど、人とのつながりが減って閉鎖的になってる気がするんですよね。子育ては、8年前より、より大変になってるんだろうと思います。例えば、SNSでちょっと困っていることを投げかけたら、困っていること自体を叩かれたりとか。気軽にいろんな人とSNSで繋がれるからこそ、深く傷つく場面も増えていると感じます。」

現代は、地域とのつながりの希薄化や核家族化、家庭内での孤立も進み、子育ての悩みを抱えていても、気軽に相談できる相手がいない母親は少なくありません。

分からないことは検索すれば答えがすぐに返ってくる便利な時代。

でも、本当に苦しい時に必要なのは、一般的な知識や、専門家やAIが正解と考える情報だではなく、「大丈夫だよ」「それ、私も経験したよ」と同じ立場で声をかけてくれる人の存在、”情報”ではなく、人の経験から生まれる”知恵”なのかもしれません。

便利な時代だからこそ、人と人とのつながりの価値が、改めて問われている。私たちは、孤独が深まる現代の子育て環境に危機感を抱いています。

ママ友がいても孤独を感じる理由

子育ての孤独というと「相談相手がいない」「周りに誰もいない」という状況を想像するかもしれません。けれど実際には、夫がいても、祖父母がいても、ママ友がいても、子育て支援施設に通っていても、SNSでつながっていても、「孤独」を感じている母親は少なくありません。

理事メンバーからは「周りに人はいるのに、本当に困っていることは言えない。」「弱音を吐いたら迷惑をかける気がする。」「みんな上手に子育てしているように見えて、自分だけができていない気がする」そんな声があがりました。

子育ての孤独は、周りに人がいないことではありません。本音を話せる関係性がないことによって生まれる場合もあります。

SNSを開けば、楽しそうな家族の写真や、充実した子育ての様子が目に入ります。ママ友との会話も、子どもの習い事や学校の話はできても、自分の不安や悩みを打ち明けられる関係とは限りません。

本当に苦しい時ほど、「こんなことを言ったらどう思われるだろう」と考え、一人で抱え込んでしまうことがあります。

孤独とは、一人でいることではありません。「自分の本音を安心して話せる相手がいないこと」なのかもしれません。

ぴこはなの理事たちも、それぞれ子育ての中で悩み、迷い、立ち止まった経験があります。だからこそ、「助けて」と言えること、「大丈夫だよ」と言ってもらえる関係、つながりの重要さを、子育て現場で、リアルに感じています。子育てを一人で頑張る社会ではなく、悩みも喜びも分かち合える社会へ。ぴこはなは、人と人とのつながりの中で生まれる安心感を大切にしています。

 「うちの子が不登校に」それは特別なことではない

理事たちの対話の中では、不登校についても話題になりました。

保育士として働きながら4人の子育てをしているさやかさん自身も、長女の不登校を経験しています。

さやか「最初は本当に苦しかったです。仕事も家庭も子育ても、全部うまくやりたいと思っていたのに、現実はそうはいかなくて。こんなに苦しいのは自分だけなんじゃないかと思っていました。」

けれど、同じような悩みを持つ親たちと出会い、話を重ねる中で少しずつ考え方が変わっていったそうです。

さやか「みんな悩んでいて、みんなそれぞれの形で乗り越えている。それが分かっただけでも安心できました。」

いずみさんは、不登校が増えている背景についてこんな見方をしています。

いずみ「今って、学校の外が面白くなりすぎたんですよね。娯楽だったり、子供がわっと驚くようなものだったり、知らないことに一瞬で触れられたり。

先生もそりゃ、大変だよねって、すごい感じてて。

だから、どこを責める・責めないの話じゃなくて、とにかく大変だよねって。みんな協力しようよって思います。」

娯楽、世界中の人と繋がれるオンラインゲーム・オンライン学習、SNSを通じたコミュニティ。

以前よりも子どもたちが学び、成長できる場所は確実に増えています。学校だけが子どもの居場所ではありません。

大切なのは、その子が安心して過ごせる場所があること。そして、自分らしく成長できる環境と出会えることです。

不登校は、もはや一部の特別な家庭だけの問題ではありません。だからこそ、親が一人で抱え込まないこと。子どもも親も、地域や人とのつながりの中で支え合えること。

私たちは、その環境づくりこそがこれからますます大切になると感じています。

本当に困っている人ほど支援につながれない

私たちが共通して感じていたのは、「支援がないこと」よりも、「支援があっても届いていないこと」への課題感でした。いずみさんは、これまで多くの親子と関わる中で、こんな現実を何度も見てきたと話します。

いずみ「本当に困っている人ほど、自分から助けてって言えないんですよね。」

子育て講座や相談会、地域のイベントなど、探せば支援の場はたくさんあります。けれど、余裕がある人ほど情報を取りに行けて、本当に苦しい人ほど、その情報にたどり着けない。

「誰かに相談した方がいいのかな。」そう思っていても、「こんなことで相談していいのかな。」「私が頑張ればいいだけかもしれない。」そんな気持ちから、一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。

理事のメンバーもまた、子育てや仕事、家族の問題に悩みながら、人とのつながりによって支えられてきた経験があります。

だからこそ、ぴこはなが目指しているのは、困った人が自分でたどり着くのを待つ場所ではありません。

困った時に思い出してもらえること。そして、「一人じゃない」と感じられるつながりを、地域の中に増やしていくことです。

支援する人、支援される人と分けるのではなく、支え合える関係性を増やしていく。その小さな循環の積み重ねが、子どもたちの未来を支える力になると、私たちはは信じています。

子育てを家庭だけで背負う社会の限界

理事のふみこさんは、子育てをしている中で今も強く感じる違和感があると話します。

ふみこ

「近所の方から『大変だよね』って声をかけてもらうことがあるんですが、その言葉の前提には、『ママが家事も育児も全部やるもの』という考え方が残っているように感じるんです。」

近年は、保育園の送迎や家事・育児に積極的に関わる父親も増えています。それでもなお、「子育ての中心は母親」という価値観は社会のあちこちに残っており、多くの家庭で負担の偏りが生まれています。

ふみこ

「子育ては家庭だけで抱え込むものではなく、社会全体で支えていくものだと思っています。」

そして、子どもに関わるのは親だけではありません。保育士、先生、地域の大人、スポーツ指導者など、多くの大人たちが子どもの成長に影響を与えています。まゆかさんは、近年進んでいる部活動の地域移行にも注目しています。

まゆか

「学校の部活動がなくなって、地域のクラブチームに入るか、スポーツ自体をやめるか、という選択をする家庭も増えています。」

その中で気になるのは、指導する大人たちの価値観や言動だと言います。

まゆか

「子どもって、本当に大人の影響を受けるんですよね。

だから親だけじゃなくて、地域の指導者や関わる大人たちも、自分が子どもに与える影響の大きさを意識してほしいなと思います。

例えば、クラブチームの練習の途中に、たばこを吸いに行くとかは、ちょっと…。」

ふみこ

「学童もそうですよね。上から目線の先生がいたりして。

園や学校やの先生以外が子どもたちに関わる機会が増えていくからこそ、指導する大人側も学び続けることが大切だと思うんです。」

のぞみ「子どもが成長してくると、家や学校の外で大人と関わる時間が増えてきますからね。

年齢によっては、親の影響よりも周りの大人の影響が強くなってしまうので、親としては、子育てコーチングや何かを学んだ大人が子どもに関わってくれると安心ですね。」

昔は当たり前とされていた言葉遣いや価値観が、今の子どもたちにとっては大きな傷になることもあります。だからこそ、親だけでなく、子どもに関わるすべての大人が、自分の影響力を意識する必要があると、私たちは考えています。

子どもは家庭だけで育つのではありません。地域の中で、今ではオンラインの中でも、多くの大人との関わりの中で育っていきます。

地域の大人、学校の先生、スポーツ指導者、習い事の先生、企業、オンライン上での言葉、チャット…。

子どもに関わるすべての大人が学び続けることも、子どもたちの未来を支える大切な土台なのかもしれません。ぴこはなが目指しているのは、親だけに責任を背負わせる社会ではなく、子どもだけでなく、みんなで育ち合える社会です。

子どもの笑顔は、まずはママの笑顔から

今回の座談会では、AI相談の増加、不登校、地域とのつながりの希薄化、子育て家庭の孤立など、さまざまな社会課題について語り合いました。理事たちの話を聞いていると、どの課題も最後は同じ場所につながっているように感じます。

それは、「ママが安心して子育てできる環境が必要だ」ということです。

子どもを大切にしたい。子どもたちに幸せになってほしい。その想いは誰もが持っています。でも、誰にも頼れず、一人で頑張り続けているママも少なくありません。

悩んだ時に相談できる人がいること。

「大丈夫だよ」と言ってくれる仲間がいること。

一人で抱え込まなくていいと思えること。

そんな小さな安心の積み重ねが、ママの笑顔につながり、その笑顔が子どもたちの安心につながっていく。

誰かとつながりながら、一緒に考え、一緒に育っていける社会をつくりたい。

それが、ぴこはなが目指している未来です。子育て家庭が抱える課題は、一人の努力だけでは解決できません。だからこそ、親・地域・学校・企業・行政がつながる必要がある——次は、私たちが目指す未来についてです。

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