この記事では、ぴこはなの理事メンバーたちが、どんな経験や想いから活動に関わるようになったのか、その原点をご紹介します。
子育ては、1人で抱え込むものではない
「子育ては、1人で抱え込むものではない」
これは、私たちが活動を始めたあとに生まれた言葉ではありません。私たち自身が、子育てや教育、働き方の中で孤立や苦しさを経験してきたからこそたどり着いた想いです。
教育現場で、支援につながらない子どもたちを見てきた人。
海外での出産・子育ての中で、誰にも相談できず苦しんだ人。
子どもの不登校を経験し、大好きだった仕事を手放さなければならなかった人。
地域で子育て家庭と向き合う中で、支援の届かなさを感じてきた人。
それぞれの原体験は違います。
けれど私たちは同じ問いにたどり着きました。
「本当に困っている人に、どうすれば手を届けられるのだろう」
その問いから生まれたのが、NPO法人ぴこはなです。
なぜ私たちは、ぴこはなを立ち上げたのか
「教育だけでは支えきれない現実」
学習塾で7年間、子どもたちと向き合ってきたのぞみさん。その中で感じたのは、「勉強を教えるだけでは解決できない問題がある」ということでした。
さーや「どんな限界を感じていたのですか?」
のぞみ「塾に来られる子は支援ができても、本当に困っている子ほど支援につながらないんですよね。
塾に来ている子でも、例えば…進路指導の時に、親が詳しく知らない状況で、子供の将来を決めるっていうことが多くて、もどかしかったですね。家庭にもよりますが、塾に預けていればOKというか…、子どもに関心がない親が結構いて。
子どもにとって、親の影響ってとても大きいんです。教育だけでなく、家庭での子育てや親の知識が足りないと感じることがありました。」



「塾の先生としての立場では、子どもの課題への対応に、限界があったのですね。」
のぞみ「親が【子育てを学ぶ】だったりとか、時代もこの数年で大きく変わっているので【子どもに関わる将来について学ぶ】っていう時間がもっと必要だなって感じましたね。
子どもを支えるためには、親も必要だし、それ以外の周りの大人や地域も一緒に関わる必要があります。そう考えたときに、ぴこはなの、親も地域もみんなで育ちあうっていうところに共感して、活動に関わりたいと思いました。」
家庭の状況、親の考えや価値観、地域とのつながり。子どもを取り巻く環境が、その子の未来に大きく影響している現実を何度も目の当たりにしてきたのぞみさん。NPO法人ぴこはなで「子どもだけを支えるのではなく、親も地域も、保育者も教育者も、一緒に育ち合う環境を目指す」そんな社会の実現を目指しています。
檻の中にいるようだった子育て
「生まれてくる子供はみんな幸せであってほしい。子供たちが笑顔で安心して育つためには、ママたちが安心して子育てできる環境が必要」
そう強く語るまゆかさんは、出産後、鬱のような状態になった経験があるそうです。
理由は孤独な育児。ご主人のお仕事でアメリカへ渡り、コロナ禍での出産。
頼れる人も、気軽に話せる相手もいない環境の中で、2人のお子様の子育ては本当に苦しかったと、原点を振り返ります。
まゆか「話す相手は夫と子供だけっていう生活が続いた時、かなり苦しかったんですね。その時に、やっぱり子育てってやっぱり一人でするもんじゃない!っていうふうに強く感じたんです。
コロナ禍だったこともあって、広い世界にいるはずなのに、狭い狭い檻の中に入れられているような気持ちになってしまって…。もう、家(檻)の中から出られない、みたいに沈んでいった時が、一番しんどかったですね。
今では、自分の考え方次第で、世界が変わるということを実感しているので、当時は自滅していたと思いますw」
日本人の知り合いができ、少しずつ人とのつながりが増えていく中で、心は少しずつ軽くなっていきました。話を聞いてくれる人がいる。共感してくれる人がいる。それだけで、見える景色は大きく変わったのです。
【子育てがつらいのではない。孤独がつらい。】この違いに気づいたのは、後になってからでした。
まゆか「帰国した時に、いずみさんと出会って「子どもの笑顔はママの笑顔から」(一般社団法人sunnysmile協会の理念)という理念を聴いて、まさにこれだ!と思って。
子育てを家庭だけの責任にしない、地域、大人たちみんなで子どもたちを育てていく社会を作りたいという想いを聞いて、なんかもう、ぜひ一緒にやっていきたい!と思いました。」
今では、楽しく子育てができていると明るく話すまゆかさん。現在では、過去に病んでいた経験があったとは思えないくらい、明るく元気にイベント運営などを行っています。
子育て仲間やコミュニティの存在は、情報を得るためだけではありません。
子育ては、一人で頑張るものではない。誰かに頼っていい。誰かとつながっていい。
その当たり前を、もっと多くの親子に届けていきたいと考えています。「ひとりじゃない」と感じられることそのものが、人を支える力になるからこそ、ぴこはなは「安心してつながれる場所・環境」を大切にしています。
「苦しいのは、私だけじゃない」仲間に支えられて立ち上がれた
保育士として働きながら、4人の子どもを育ててきたさやかさん。
保育園では多くの母親と関わり、子育てや家庭の悩みを聞く機会もたくさんあり、「もっとママたちの力になりたい。」そんな想いから子育てコーチングを学び始めました。
しかし、学びを社会に返していこうと思った矢先、長女の不登校が始まります。
さやか「仕事と家庭の両立がさらに難しくなり、大好きだった保育士の仕事を辞めなきゃいけないっていうのがすごく苦しくて。支えたいのに、支えられない。私自身が立ち止まってしまった。っていう状況になって…涙」
当時を振り返ると、今でも感情がにじみ、声が震えます。他の理事たちも、静かに
「うん、うん…。」
子育てをしながら働くこと。家族を支えること。そして自分自身の想いをあきらめないこと。その難しさを、みんなが知っているからです。
さやか「一番苦しくて、もがいているときに支えてくれたのは、一緒に子育てやコーチングを学んできた仲間たちでした。
色々な人に話をしたり、色々な考え方を聴いたり、学んだり、を繰り替えしていくうちに、気持ちを前向きに切り替えられたんですよね。
私自身が、最初すごく辛くて、みんなに支えてもらって、そこから支援の方に回ろうと思えた経験があります。
その循環をぴこはなで作っていけると思ったら、これは絶対私がやりたい!と思い、一緒に始めました。」



「さやかさんが、相談する側から、相談される側になれたきっかけはありますか?」
さやか「こんなに苦しいのは自分だけかな、って思ってたんですけど、みんな悩んでて、みんなそれを乗り越えている。切磋琢磨して、一緒に成長できることに気づけた、自分だけじゃないっていう安心感が大きかったですね。」
さやか「あと、同じ立場の、複数の人(不登校のママ、仕事や家事育児に悩むママ)と話す機会を何回か作れたっていうのも、ポイントかもしれません。誰か1人に依存するのではなく、いろんな立場や考えの方と出会えるっていう環境が大きかったですね。」
特別な答えをくれたわけではありません。話を聞いてくれるのは、年齢も近く、同じように悩みながら子育てをしているママたち。「あなたはどうしたい?」と問い続けてくれる仲間。
そこで気づいたのは、人は正解を与えられることで前に進むのではなく、自分で考え、自分で選び、自分で歩き出せるようになった時に本当の力を取り戻すということでした。
ぴこはなが大切にしているのは、支援する人と支援される人を分けることではありません。支えられた人が、誰かを支える側にもなれる。その循環が生まれることです。愛と安心は、一方通行ではなく、人から人へと受け継がれていくもの。さやかさんの経験は、そのことを教えてくれています。
本当に手を差し伸べたい人ほど手が届かない
ぴこはながNPO法人として活動する理由を、代表のいずみさんはこう語ります。
「本当に手を差し伸べたい人ほど、自分から助けを求めることができない。」いずみさんは、これまで多くの親子と関わる中で、その現実を何度も目の当たりにしてきました。
いずみ「情報を取れる人や、お金がある人だけに子育てや働き方の学び、子育て=己育ての環境を届けるのが本当に正しいのかなって、ずっと考えていました。より広く手を差し伸べるためには、非営利の活動が必須だと思ったんです。
講師の人たちからの実際の声としても、有料の活動以外の活動をしたいっていう声もたくさんあったんですよね。悩む側も、教える側も、全部ひっくるめて一番いい方向に向かいたいって考えた結果、NPO法人にたどり着きました。」
みんなで育ちあえる社会をつくりたい
ぴこはな理事たちの原点は、それぞれ違います。
教育現場で感じた限界。孤独な子育ての苦しさ。不登校や働き方に悩んだ経験。本当に支援が必要な人ほど、支援につながれない現実。
それぞれが違う場所で、違う悩みを抱えながらも、たどり着いた想いは同じでした。
「子育ては、一人で抱え込むものではない」
だから私たちは、親も子どもも、地域も、みんなで育ち合える社会をつくりたい。困った時に頼れる人がいて、安心してつながれる場所がある。そして、支えられた人が、いつか誰かを支える側になれる。
そんな愛と安心の循環を広げるために、私たちはぴこはなを立ち上げました。
続く…
→理事座談会#2「「便利なのに苦しい」今の子育て現場で起きていること」
